突然現れた家と値引交渉
運命の出会いかと思った物件が売れてしまって2週間後、T社のすらっとしたほうの担当者が新たに資料を送ってくれました。その中で、妻が興味を持った物件を内覧することにしました。
妻はその物件をSUUMOで見て、1ヶ月ほど前から知っていたそうです。それなのに内覧しなかったのは、価格が予算より800万円も高かったから。私も、予算を500万円以上超える物件は検索対象外にしていたので、気づかなかったのです。
1月後半になっても売れず、3月決算が近づいたことで、価格は200万円下がっていました。それでも600万円の予算オーバーは、まだまだ手が出ない領域です。
場所は北浦和駅西口から徒歩14分ほど。元々、一軒家が建っていた敷地を3区画に分け、戸建を建てて販売しておりました。そのうちの1軒です。
内覧してみると、なかなかいい。間取は希望に近い。子供の学区は変わりますが、越境が認められれば、今通っている学校にも通えます。旗竿地に近い形状で、唯一空いている南側が駐車場なので、将来、家が建つ可能性があるのが気になる点です。
でも、気に入ったとしても、予算的にはまだ手が出ません。
「決算期も近いですし、あと300万円くらいなら値引できるかも」
T社の助言に従い、元売のメーカーに交渉してもらうことにしました。
ただ決算期が近いということは、物件が決まるのも早い時期です。迷っている間に他で成約するのも心配ですが、焦りすぎて誤った判断をするのも怖い。
そこで、優柔不断な私が早く正しく決断するために必要なことを全て実行しました。
まず物件の良い点、悪い点を紙に書き出し、総合的に評価しました。また周囲を散策したり、駅や学校までの道のりを歩いてみました。さらに、妻の親にも一緒に内覧をしてもらい、意見を聞きました。
値引交渉については、250万円プラス30万円と回答が来ました。250万円は純粋な値引、30万円は金券とのこと。引越後に必要なカーテンや家の整備費用に利用できるそうです。
それでもまだ予算を約300万円オーバーしています。そこで、思い切って仲介業者に仲介手数料を無料にしてもらうよう交渉しました。本来なら物件価格の3%かかる仲介手数料がなくなれば、実質的な予算オーバーは100万円代まで下がると考えたのです。
結果、T社は願いを聞き入れてくれました。
仲介業者は売主からも仲介手数料をもらえるため、「買主の仲介手数料は無料」をウリにする業者もいます。T社は通常は無料ではありませんが、交渉すれば可能性はあるかなと思ったわけです。柔軟に対応して頂き、感謝するしかありません。
こうして1年半続いた私の家探しはゴールを迎えたのでした。
エピローグ
物件の購入を正式に申し込むと、契約日の話になりました。
「契約はかなり大変なので、できれば日を改めてお仕事の無い日にやりましょう」
T社のほうからそのように言って頂き、改めて信頼感が増しました。
後日、無事に契約が済んだ後、T社のすらっとした担当者が言いました。
「こんなに時間をかけさせてしまってすみませんでした」
私が家を探し始めてから一年半のことを言っているのです。
もちろん時間がかかったのはT社のせいでも、担当者のせいでもありません。でも、なかなか良い物件が見つからず夫婦で悩んだり、解約騒動で苦しんだりした日々を思い出し、グッときました。
「かっこいいじゃねえか」
爽やかに微笑む担当者がずいぶんと凛々しくみえました。(終わり)
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