京都は木屋町の雑居ビルにあるバー「Rum&Whisjy」では、博学なバーテンダーから、酒にまつわるうんちくを夜な夜な聞くことができる。
この夜は、英国海軍が強かった理由を聞いた。
発端はホットラムだ。
京都の冬は寒い。飲み屋から飲み屋へ、はしごをしているうちに冷え切ってしまう。
そんなときは、ここでホットラムを飲んで、凍りそうな心と体を溶かす。
さっぱり気分の時は、ホット・バタード・ラム。ラム、バター、砂糖に熱湯を注ぐ。
こってりならホット・バタード・ラム・カウ。熱湯の代わりにホットミルク。コクがあり、身も心もホッとする。
「ホットラムは英国海軍から生まれたという説があります」
うろ覚えで恐縮だが、そんな始まりだった。
ーー英国海軍では、乗組員にラムを支給していました。
長い航海で溜まるストレスの解消や、船員の士気を高めるのが目的だったのでしょう。
ただし、ラムはアルコール度数の強い酒です。そのまま飲んでは酔っ払ってしまうし、体にも悪い。ですので、水などで割って飲むようになったそうですーー
薄暗いバーのカウンターでランプの炎がゆらゆら揺れる。ちびちびやりながら眺めるうち、想像は英国海軍に飛んだ。荒海を漂う船に、極寒の風が容赦なく吹き付ける。凍える身体を、ホットラムはさぞかし温めただろう。
ーーまた当時、英国海軍は強かったのですが、それは「ラムを飲んでいるからだ」と言われていました。
しかし実は誤りでした。実際はラムに入れたライムのおかげだったのです。
当時、船乗りは長い航海の途中、壊血病に悩まされていました。壊血病の原因はビタミンCの欠乏です。ライムにより、知らずに健康を保ち、強い海軍となったのですーー
酒は歴史の一部を創っているのだ。
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