大谷翔平が打っている。2021年、エンゼルスで81試合に出場し、32本の本塁打をかっ飛ばした。
ようやく。とうとう。いよいよ。
そんな感想を抱く方も多いのではないか。永らく未完であった「大器」は「とうとう」本格化したのだろうか。
思えば大谷のこれまでの歩みは、常に「未完成」であった。
花巻東高校の恩師、佐々木監督は、入学してきた大谷を見て「まだ骨が成長段階にある」と、しばらくは野手として起用した。甲子園には2度出場。150kmの球を放り、大阪桐蔭の藤浪と投げ合いもしたが、怪我があれば投球は控え、野手として出場するなど、照準を目先にあわせずに育てられた。
NPB時代。なぜか「プロフェッショナルの野球人」という印象が薄いのは、入団の経緯によるところが大きい。海外志向の大谷を振り向かせた日本ハムの提案は「夢への道しるべ」。メジャーへのステップアップ前提での入団といえる。おまけに「二刀流」を目指したことにより、日ハムでの5年間は更にモラトリアムの色を濃くした。
ただ、改めて当時の成績を掘り起こしてみると、記憶より優れていて驚いた。3年目に投手として15勝、4年目に本塁打22本、打率.322を記録している。とはいえ、5年間で42勝、48本塁打は、求められるスケールからするとやはり成長途上の感がある。
エンゼルス移籍後の3年間も試行錯誤が続く。2018年に打者として打率.285、本塁打22本で新人王を獲得。2019年も近い成績をあげるが、2020年は落ち込みを見せる。
投手としては2018年度に防御率3.36、4勝を記録するが、その後は故障もあり目立った活躍をしていない。
エンゼルスの思惑は知るよしもない。ただ、23歳、年俸約6000万円で獲得した選手である。ヤンキースのように常勝を背負ったチームでもない。MLBという最高峰の舞台でもなお、大谷はすぐに大人になることを求められない。少年のように無限の可能性を追いかけつつ、未完の才能の一部を使って及第点を残す。
2021年、7月初めの時点で本塁打数メジャー首位を走る様は、果たして打者としての完成を意味するのか。投手としては、防御率3.49、4勝の成績は悪くないはずだが、時折、球が荒れるなどまだ成長の余地を感じさせる。
いずれにせよ、未完の大谷を見るのは楽しい。いつか完成に至るのか。いったいどこまで伸びるのか。二刀流のゆくえは。大げさにいえば、人類史上においても稀な挑戦をリアルタイムで見られる喜びを噛み締めている。
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